ソフトウェアエンジニアリングの呪縛

『新ソフトウェア宣言』は、2010年6月9日〜11日に横浜開港記念館で開催されたソフトウェアシンポジウム2010のソフトウェアエンジニアリングの呪縛WGの一つの成果として位置づけられます。以下は、当該WGの活動概要をポスト・プロシーディングス用にまとめたもので、いつの日にかシンポジウム側で公開される予定のものです。
→00JupakuSite_20100714upd.pdf

SS2010 PostProceedings
S.Otsuki & K.Hama, 2010.7.14

ソフトウェアエンジニアリングの呪縛
担当プログラム委員 大槻 繁、濱 勝巳

ソフトウェアエンジニアリングの呪縛宣言          

 従来のソフトウェアに関わる諸活動の呪縛から解放され、新たな世界を築いていくためには、新たな呪縛に捕われ、新たな中心を設定していかなくてはなりません。我々は、以下の関心の候補が有望であると確信しています。

1.ソフトウェアは、数学的理論探求の上に成り立つ
2.ソフトウェアは、部分に還元することが不可能な全体である
3.ソフトウェアは、実行可能な知識である
4.ソフトウェアは、学びの副産物に過ぎない
5.ソフトウェアは、制約条件下で創造される美しい人工物である
6.ソフトウェアは、富を生む経済活動の資源である
7.ソフトウェアは、言語ゲームである

上記、基盤化、全体論、知働化、進化論、意匠論、経営論、遊戯論などの広範で、かつ、相互補完的アプローチが、新しい物語を生み出し、新たなる地平を切り開いていくことでしょう。

大槻繁,芝元俊久,高野明彦,竹内雅則,時本永吉,夏目和幸,萩原正義,
羽生田栄一,濱勝巳,本橋正成,山田正樹,綿引琢磨

2010年6月11日 横浜にて
→NewSoftDecl20100611Yokohama.pdf

概要                           

 ソフトウェアエンジニアリングの呪縛ワーキンググループは、ソフトウェアに関わる技術者、研究者、経営者、コンサルタントなどの多方面の方々に参加いただき、クールにソフトウェアエンジニアリングの現況を把握し、限界を見極め、課題を整理し、次のステップに進むための準備をしようという意図を持って会合を企画しました。
 ソフトウェアは、業務領域、人間社会、物理世界などの実世界に置かれ、実世界と相互作用を及ぼし合います。サービスサイエンス(エンジニアリング)、クラウドコンピューティングのみならず、従来の情報システムや組込みシステムの構築などでも、今までとは異なる視点が要求されてきています。
 中心課題は、ソフトウェアの外側にあるのです。ユーザや人間中心のアプローチ、コンテクスト、様相、場(ば)を主題に据え、従来のソフトウェアエンジニアリングの限界を見極め、その「呪縛」から解き放たれるには、どうしたらよいかを討議しました。

公開プログラム(呪縛WG企画)              

・知働説:「呪縛」からの解放を目指して

濱勝巳 (アジャイルプロセス協議会 会長), 
大槻繁 (同 フェロー, 知働化研究会 運営リーダ)
アジャイルプロセスのもたらすインパクト、不確実性の正体とその対応、ソフトウェアへ自然体で向き合う事、言語ゲーム的転回などについて解説。呪縛WGの目論見についての紹介。
→01OtsukiHamaIntro.pdf

・サービス科学とソーシャルeサイエンス

橋田浩一 (産業技術総合研究所)
サービスとは何か、サービス科学は可能か、目的に基づくサービス設計などの観点から、基幹業務情報システムの開発や医療サービスの事例を交えつつ、サービスイノベーションについて紹介。
→02HashidaLec01.pdf(前半)
→02HashidaLec02.pdf(後半)

・連想検索:知の蔵を繋ぐための情報サービス

高野明彦 (国立情報学研究所)
新WebcatPlusの開発に伴う、データ集めの苦労話や、マルチベンダーによるシステム開発、PC/iPhone/街の連携などについて紹介。
→03TakanoLec.pdf

招待講演(ソフトウェア・シンポジウム企画):呪縛WGと関連した講演

・ソフトウェア工学の数学的基盤の提示

萩原正義 (マイクロソフト)
これまでソフトウェア工学の基盤となるモデル化の試みは各種計算モデル、モデル言語のメタモデルなどが存在しましたが、適用範囲や理論的基盤の発展性などにおいて制約がありました。ここでは、局所情報の大域的統合に基づく数学的基盤として、"Incrementally Modular Abstraction Hierarchy"を紹介し、ソフトウェア工学のいくつかの課題に対する適用の試みについて解説。

呪縛・神話・未解決問題                  

・「呪縛」とは、「言葉によって、行動の自由を制限すること」です。

ソフトウェアエンジニアリングの呪縛というのは、ソフトウェア開発、プロジェクトマネジメント、要求定義、アーキテクチャ、プログラミング、テスト、品質保証、是等の経営、企画、営業、コンサルティング、研究などに携わる人々が、限界を感じている事項を掲げたリストです。つまり、判っちゃいるけどやらざるを得ないことです。(限界を感じる)規範的記述、(誤った)教えなどの表現形式をとることが多いでしょう。

呪縛001 工程が遅延したら人を投入せよ
呪縛002 品質を上げるためにはテストを徹底的に行うしかない
呪縛003 形式手法を使って仕様を明確にして高信頼化を達成する
・・・

・「神話」とは、「崇拝する事物や力によって、人を説得する表現」です。

リストアップされた呪縛に対し、これ等の背後にある思想、法則、定理などとして、集約してみることにします。人々が呪縛に捕われている元凶となるものを見つけていくことになります。分析的あるいは法則的記述などの表現形式をとるのがよいでしょう。神話は、それぞれが一冊の書籍(例えば『人月の神話』)になるくらい意味の豊富な「物語り」になると思います。ここでは、これ等の適切な命題をインパクトのある形で集約していくことになるでしょう。成果としての「神話」の候補イメージは、以下のようなものです。(あくまでも一つの些細な例です。)

神話1 全体は部分の総和である。(分割して征服せよ:divide and conquer)
神話2 ソフトウェアづくりは創造的活動である。
神話3 要求はユーザが知っている。(お客さまは神さまだ)
神話4 全ては機能に帰着する。(機能はタダではない)
神話5 良いソフトウェアづくりにはモチベーションが必要だ。
神話6 モデリングによって形式知化できる。(暗黙知、語ってしまえば形式知)
神話7 人と月とは入替え可能だ。(人月の神話)

・「問題」とは、「中心となるテーマを掲げて、意を問うこと」です。

神話の形まで表現することができたら、次は、これ等の神話を乗り越えて、次世代の明るい未来を切り開くためには、どうしたらよいかということになります。ここでは、これが解けたら世の中変わると思われるような、問題をリストアップしておくことにします。解けないことが証明されるかもしれません。このような「未解決問題」を世の中に提示しておくことは、将来の研究や技術開発の方向性を示唆することに繋がると思います。23個(ヒルベルトの未解決問題の数)くらい掲げられると美しいでしょう。

問題01 並行プロセスには良構造(well-formed structure)が存在する。
問題02 言語記述(行為)と文法との関係を分析可能な計算理論が存在する。
問題03 情報財に関する価格決定の手法が、均衡理論の拡張として定式化できる。
・・・

参加メンバのポジションペーパ               

参加者のポジションペーパには、以下の事項が含まれています。
(1)参加者の諸活動(仕事や研究など)のバックグラウンド
(2)感じている「呪縛(限界)」や問題意識
(3)自らが考える「神話(迷信・都市伝説)」の候補
(4)「呪縛」や「神話」を乗り越えるための新たな「問題設定(未解決問題)」と
   その先に開ける明るい地平のイメージ

参加者は以下の通り。
竹内雅則  株式会社ヴィクサス
綿引琢磨  デライトテクノロジーズ
芝元俊久  日立システムアンドサービス
萩原正義  マイクロソフト/公開講演者
夏目和幸  デンソー
山田正樹  メタボリックス/ソフトシンポPC委員長
時本永吉  個人 →04g_TokimotoPosition.pdf, 04g_TokimotoPresen.pdf
本橋正成  個人 →04h_MotohashiPosition.pdf
大槻繁   一(いち)/呪縛WG コーディネータ
濱 勝巳  株式会社アッズーリ/呪縛WG コーディネータ
羽生田栄一 豆蔵

→ポジションペーパ全体のまとめ 04PositionPaper_All.pdf
→討議のアジェンダ 05DiscussionAgenda.pdf

パネル討議の概要                     

・ソフトウェアエンジニアリングの呪縛・神話・未解決問題

大槻繁,濱勝巳(WGコーディネータ)
討議結果の披露、パネル討論
→06Panel.pdf

その後のまとめの試み(コーディネータの対話など)     

WG討議後、しばしの時を経た後、まとめの試みをしました。

→07HamaEssay.pdf
→07OtsukiEssay.pdf
→07OtsukiHamaNoTaiwa.pdf

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